仕事で郡部の町に行ったときのことです。
その町は国立病院があったり、いろいろな行政の支所や出張所があったりする、郡部の中では中心になっている町です。
そこでの仕事は午後からだったので、その前に昼食を食べようと大手スーパーの店舗内にあるMバーガーに入りました。
店の中では日焼けなのか汚れなのか顔の黒い雨合羽の上下を着た少年がお客として来ていました。
席はちょうどついたてで店員からはよく見ない場所でした。
何を食べていたのかはよく覚えていませんが、気付くと冷水用のコップにたぶんそのスーパーの食品売り場で買ったであろう紙パック入りのグレープジュースを注いで飲んでいました。
もしうるさい店員に見つかれば「持ち込み禁止です」と怒られるでしょう。
少年もそれを知っているのでしょう、コップに注ぐときはテーブルの下でそっと注いでいました。
少年なりの倹約なんでしょうね。
しばらくすると、少年がコップを以て立ち上がり、店内をきょろきょろ見渡しました。
きっと冷水器か水差しを探していたのでしょう。
でもその店にはなかったのです。
すると店員のおばちゃんが「お水ですか?こちらから差し上げますよ」と、少年からコップを受け取ってしまいました。
そのときの少年のドギマギした仕草はまだ目に焼き付いています。
たぶん少年はジュースを飲んだコップを水で綺麗にしたかったのでしょう。
悪くいえば、持ち込んだジュースを飲んだ痕跡を消そうと思ったのかもしれません。
そのコップを店員に持って行かれてうろたえてしまったに違いありません。
店員は咎めることもなく新しいコップに入れた水を持ってきてくれました。
いやぁ、ダメなんですよ、弱いんですよ、そういうのに…
当たり前に悪いことをして、知らんぷりする人間が多い中で、
この少年のように、自分がしたことの始末をきちんとつけようとする姿勢。
そして、それがばれてしまって、ドギマギうろたえてしまう不器用な純粋さ。
こんな私なんですが、そういう姿に弱いんです。
その少年がどうしてそこにいたのかは知りません。
でもその姿から想像するに、長い期間をかけて自転車か徒歩でどこかに向かおうとしていたんじゃないかと思います。
(ひと夏の挑戦か、もしかしたら家出かもしれませんが)
今になって思えば、もう少し行くと温泉があるからそこで汗と疲れを流しておいで、といくらかカンパすることもできたでしょう。
悔やまれます。
でも、少年よ。
君のその生きざまは嫌いじゃないよ。
いろんな汚い大人が居る中で、
(ここにも君のことをネタにして「いい人」ぶっている大人が居る)
君のその不器用な純粋さは素敵だと思う。
その気持ちを忘れずに成長してくれれば、君はもっと大きな人間になれる…はず。
そうあって欲しい。
頑張れ!少年。